会津若松
向瀧(榮川酒造)
山廃仕込 純米酒
『美酒佳肴(びしゅかこう)』
平成17年10月
福島県の会津若松にある老舗旅館“向瀧(むかいたき)”さんは 学生時代からの親友平田裕一さんが継承されている旅館です。
向瀧さんは、創業百三十三年の歴史をほこり、登録有形文化財 第1号物件として登録されたとても老舗の旅館です。
大正4年に野口英世が母親と逗留したときに、料理と酒の旨さに感動して、書き残した揮毫『美酒佳肴』。
先日、平田くんと懐かしく連絡をとっておりましたら、“美酒佳肴”の話になり、希少な1本を送っていただきました。
きょうはその書を命名された酒
“美酒佳肴”をテイスティング(利き酒)してみましょう。
酒造りを引き受けられたのは榮川酒造さん。会津産の美山錦と磐梯山の水を使った山廃仕込みの純米酒(精米歩合60%)。出来上がったもろみを木綿の袋に入れて吊るし、自然に滴り落ちるようにして酒を搾ります。極寒の2月に仕込みが始まり桜の季節にようやく完成します。
“山廃造り”というのは、麹が自分の力だけで発酵したお米が溶けてお酒に変化していく自然な醸造方法で、ワインの乳酸発酵と同じような原理ですね。しかし、時間と丁寧な手間を必要としますので、高級なお酒を造る場合のみに用いられる方法です。
向瀧さんと榮川酒造さんの情熱が作り上げた渾身の逸酒、”美酒佳肴”です。

外観は、熟成した白ワインのように輝きがあり、透明感のあるほんの僅かに緑がかったさらに柔らかなグレーがかったとても明るいイエローです。ワインで言いますと
ピノ・グリージョの色合いに良く似ています。
ゆっくりとグラスをまわしたあと、ながめてみますと、ディスクは厚く、ジョンブもとてもしっかりとしていて、たくさんの涙が見えます。粘性しっかりです。
香りは控えめに仕上げてあるそうですが、フルーティで熟れたリンゴ、ライチー、グレープフルーツの香りを感じます。口に含みますと、山廃ならではのとてもしっかりとしたボディ、切れの良い辛口で、優しい甘みとほのかに酸味と渋みもあります。日本酒としてはとても重厚な味わいです。
この味わいは刺身とかしゃぶしゃぶのようなあっさりとした味の料理より、かなり味の強い煮込み料理などを想定して造られたと思います。
実は向瀧さんでは、自家製の“鯉の甘煮”が自慢の料理のひとつで、この酒はこの鯉の甘煮といっしょに味わうために誕生したそうです。またこの鯉の甘煮も逸品です。まるで牛のTボーンステーキをワインで煮込んだような姿をしていて、迫力があります。箸で身をほぐし、ひとくち口に運ぶと鯉にあまりなじみがなかった私には牛の大和煮を食べているような感じでした。魚であることをほとんど忘れるほどです。とても美味しくて感動です。
前回、ティスティングノートしましたエリオ・フィリッピーノ社のバルバレスコともあわせて味わってみましたが、これがまた良く合うのです。ということは、この日本酒“美酒佳肴”もまた極上の赤ワインのような深い味わいを楽しめるということです。この力づよいパワーは、イタリアワインでいうところの、バローロの位置づけではないでしょうか。
ワインのソムリエとして日本酒をテイスティングしてみると、その奥深さはとても勉強になり、感動がありました。 gino
向瀧さんのサイト
http://www.mukaitaki.com/※ジョンブ、とディスクの補足説明そのふたつの言葉は、ワインのテイスティングのときに使われることばです。ワインのアルコール度数や、グリセリンなどからくる粘性の度合いを表現します。
ディスクとは、ワイン(今回は日本酒ですが)の上面とグラスにあたっている部分が表面張力してできるふちの厚みのことをいいます。厚みが厚いほどアルコール度数や粘性が高くなります。
ジョンブとは、涙や、涙足などともいいますが、グラスをまわした後グラスの内側に涙のようにつたって落ちる滴のことです。その本数や落ちる速度を表現します。
涙の数が、多く、また太く厚く、ゆっくり落ちる場合は、アルコール度数は高く、粘性や凝縮度がしっかりしていることになります。
また、香りや口に含む前に、外観から色合いとジョンブ、ディスクを見ると どのようなワインかがすこしづつ割り出されてゆくのです。
テイスティングの方法を 今度また、あらためて詳しくノートいたしますね。 gino
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